November 28, 2015

ダンガンロンパ十神(上)

 佐藤友哉が『ダンガンロンパ』ノベライズに挑む! との報を受け、それが『逆転裁判』みたいなゲームだというくらいの知識しか持たず、その『逆転裁判』も裁判をするゲームだというくらいの知識しかなかった僕は、直ちに検索サイト大手グーグルを通じ、当該作品に関する情報収集を開始した。その過程をここに披瀝することは不要であるばかりか無用でもあると思われるため詳細は省くことにするが、端的に言えば「あまり期待できるものではない」ということ、これである。イロモノ臭、キワモノ感ばかりが漂い、まあそもそも出版元からして星海社。読む前からあらゆる希望が閉ざされていると考える他ない。

 とは言え、新刊が出るとなれば興奮に胸高鳴らせ発売日を待ち、期待に胸膨らませて書店に殺到する以外の選択肢を持たないのがユヤタニアンの悲しむべきところ。一般的に、佐藤読者が佐藤作品に何を期待しているかといえば、雑なキャラクターが雑な目的意識のもと雑なプロットで雑な事件を雑に解決しながら雑な世界認識を雑な筆致でもって雑に描き出しているところ、というあたりで衆目の一致するところであろう。

 この作品『十神』においてもその雑っぷりは期待の斜め上のさらに上を進みながら十全に発揮され、いやほんと佐藤先生雑すぎっしょ……と、暗澹たる心持ちかつ憤然たる面持ちでページを捲り続ける我が身を鑑みるに、情けなくも口惜しくもあらん……。などと思いながら読み進めてたのですが、「上巻了」の文字を見た途端、あら不思議、この上ない満足感に支配されている自分に気付いたのであります。

 この小説が傑作か、或いは問題作かどうかはともかくとして、そういう意味では読んで良かったなあと思うし、そうは言っても、やっぱ続刊もあんまり期待しない方がいいよなって思いました。