April 18, 2016

『ダンガンロンパ十神(中)』レビュー(短縮版)

 前巻では軸がやや佐藤ファンへと傾斜していたのに対し、今回はダンガンロンパファンへと向いています。揺り戻しでしょうか。バランス感覚というやつかも知れません。原作を知らないために戸惑うところもありましたが、まあ何とかなるもんですね。佐藤先生通常営業です。ダンガンロンパのノベライズってことで、禍々しさよりもバカバカしさの配分が高くなってるんじゃないかなと思います。

 予告通りなかなかに本格的で、メフィスト賞作家の本領発揮といったところです。いつも通りの馬鹿げた世界が待ち構えています。ただ、佐藤先生はミステリを書くのが嫌いなんでしょうか。向いてないんでしょうか。それとも書く気がないんでしょうか。中国人は登場しません。

 ミステリパートを除けば大した展開は起こりませんし、大して話も進展しません(ウィキペディアの便利な使い方を学ぶことはできます)。やたらと設定が語られるところから見て、真っ当な下巻に向けた布石と取っても構わないでしょうか。

 話自体にはあまり意外性や驚きは感じられませんでしたが、15年小説でメシを食ってる三十五歳の作家がこれやっていいんだ! という謎の感動はありました。佐藤先生は三島由紀夫に謝るべきかと思います。