August 18, 2016

『シン・ゴジラ』

 特撮に対しそれほど熱意を持っているわけではないため大部分は見逃しているはずですが、それでも過去のゴジラ作品あるいは特撮映画から不自然な形で引用されている箇所が多数見受けられました。オマージュを捧げたいという気持ちは理解できないでもありませんし、知っているネタを見つければそれはそれで楽しいのですが、映画の統一性を乱さない程度の挿入に留めておいてもらいたいものです。
 日本という国のあり方についてどうこうという部分もあまり感心できなかった部分です。USA万歳映画として知られる『インデペンデンス・デイ』ですら、ここまで露骨に自国をよいしょはしていません。希望も決意も取ってつけたような感触が拭いきれず、空々しく響きます。

 そうした内輪向けの要素に目を瞑れば、かなり楽しめる映画ではあります。緻密に練られた脚本で、ハイテンポに話は進み、中弛みもなく、約120分間ほとんど飽きることはありません。CGもほとんどハリウッド版に引けを取らないレベルと考えます。予告編からかなり期待はしていましたが、ほとんどそれを上回っています。娯楽映画としても水準以上のものになっていると言って差し支えないでしょう。
 ゴジラの出現という未曾有の事態に直面した日本国政府による対応は、どこまで現実に即しているかは判断しかねますが、かなり綿密な考証に基づいて(中略)こうして作り出された現実感によって、本来空想上の怪獣であるはずのゴジラという存在が、生々しいものとして迫ってきます。今回のゴジラは、これまで映像の中で暴れ回ってきた「自分たちのよく知っているあの怪獣」ではなく、目の前に突然現れた今まで見たことのない巨大で不気味な生き物です。怖いですね。恐ろしいですね。
 決して手放しで絶賛はできませんが、これを観てゴジラゴジラとはしゃいでしまうのも無理からぬところかと思います。