February 07, 2015

セカイ系とは

 1990年代後半から00年代にかけて作られた、オタクに人気の高い学園ラブコメや巨大ロボットSFといったジャンルを混ぜ合わせ、そこへ美少女やロボット、探偵などのオタクに好まれる要素を多く登場させることで、特に世界や社会を具体的に想像できないでいる自意識過剰な若いオタク男性をターゲットに据えた作品群を指す。
 ジャンル自体の虚構性を批評的に描くという自己言及的な構造と、そのゲーム的な方法論が特徴である。

 典型的なセカイ系作品では、強大な力を持ち世界の命運を握る少女と、無力で彼女を見守るだけの少年、という二人の主人公が配置され、この二人を中心とした小さな関係性が、社会的、歴史的な経緯を捨象したまま世界の危機やこの世の終わりに直結するといった構図を持ち、戦闘に参加することのない少年が、戦う宿命を背負った少女から愛され、最終的に少女を失う、という展開となっている。
 主人公らによる一人語りは、権力への意志、成長の拒絶という二つの観念に根ざしており、また、作品内で実社会に関する描写が意図的に省かれることによって、「世界」という言葉で言い表される彼ら自身の世界認識の仕方が示されている。

 セカイ系作品の乱立、公共的社会の描写の不足あるいは欠如への非難や、無条件的な承認に埋没し思考停止に陥った主人公の無責任さと自己中心主義を問題視する意見もあり、ジャンルとしてのセカイ系は2010年代に入る頃にはほぼ廃れたが、とはいえ「自意識と世界の果て」というモチーフは文学の基本テーマの一つであり、その影響は形を変えつつ後続の作品へと受け継げられている。